本と楽しむ

「かばん屋の相続」を読んで——数字の裏にある「経営者の呼吸」を知る

先日、WOWWOWで放送されていた池井戸潤スペシャルの第一話『十年目のクリスマス』を視聴した。年末の温泉旅行というリラックスした時間の中で観たのですが、そのあまりの面白さに引き込まれ、帰宅後すぐに原作の短編集『かばん屋の相続』を手に取った。

本書は銀行を舞台にした6つの短編集。 中小零細企業への融資、不正、家族の葛藤……。どれも池井戸作品らしい骨太な物語ですが、中でも「融資」にまつわるエピソードには、胸に迫るものがあった。

銀行取引の「厳格さ」が意味するもの

物語を読み進めるうちに、私がこれまで表面でしか理解していなかった「銀行取引の重み」が浮き彫りになってきた。

  • 厳しい稟議を通り、ようやく実行される融資。
  • 一度でも返済が遅れれば「不渡り」の影がちらつく。
  • 二度の不渡りで「銀行取引停止」、すなわち倒産。

その先にあるのは、容赦ない債権回収。サラリーマンとして働いていると、脳裏に浮かびませんが、経営者にとっての「資金繰り」はまさに命がけの戦いなのだと痛感させられた。

自分の仕事と「お金の流れ」を繋ぎ合わせる

この読書体験は、私自身の仕事の進め方にも大きな一石を投じた。 日頃、多くの中小零細企業と取引をしていますが、過去に「支払いを1ヶ月待ってもらった」ことや、「請求金額が出来高より明らかに高い会社」に遭遇したことがあった。

当時は「事務的な調整」くらいにしか考えていませんでしたが、今思えば、その1ヶ月の延期が相手の資金計画をどれほど狂わせていたか。あるいは、その過剰な請求の裏にどれほど切迫した資金繰りの苦悩があったのか……。

「お金は、ただの数字ではなく、会社の呼吸そのものである」

その視点が欠けていた自分にはっと気づかされた。ビジネスにおいて、支払いを守る、あるいは相手の異変に気づくということは、単なるマナーではなく、相手の「命」を尊重することと同義である。

おわりに

池井戸作品が教えてくれたのは、勧善懲悪の爽快感だけではありませんでした。 一見、冷徹に見える「お金の流れ」を学ぶことは、そこで働く人々の人生や苦悩を深く理解することに繋がる。

今回の読書をきっかけに、もう一度自分の仕事における「お金」の扱い方を丁寧に見つめ直してみたいと思った。